被験者内計画と被験者間計画の違い|どちらを選ぶかの判断基準

同じ人に全条件を体験させる被験者内計画(参加者内計画)と、条件ごとに別の人を割り当てる被験者間計画(参加者間計画)は、必要な人数と気を付ける誤差が違います。両者の長所と短所を比べ、どちらを選ぶかを決める 4 つの問いと、両方を組み合わせる混合計画を説明します。
心理学実験の計画を立てるとき、最初に決めるのが「1 人の参加者にすべての条件を体験してもらうか、条件ごとに別の参加者を割り当てるか」です。前者を被験者内計画(参加者内計画、対応ありの計画)、後者を被験者間計画(参加者間計画、対応なしの計画)と呼びます。2 つの計画は必要な人数も、気を付けるべき誤差も違います。ここでは両者の違いと長所・短所を比べ、どちらを選ぶかを決める手順を示します。
2 つの計画の違い
条件 A と条件 B を比べる実験を例にします。
| 被験者内計画 | 被験者間計画 | |
|---|---|---|
| 参加者の体験 | 1 人が A と B の両方を体験する | 1 人は A か B のどちらか一方だけ |
| 比べるもの | 同じ人の中での A と B の差 | A 群の人たちと B 群の人たちの差 |
| 分析 | 対応のある t 検定、反復測定の分散分析 | 対応のない t 検定、1 要因の分散分析 |
| 必要な人数 | 少なくてすむことが多い | 条件ごとに別の人が要るので多くなる |
| 注意する点 | 順序効果、持ち越し効果 | 群の間の個人差、無作為割り当て |

被験者内計画の長所と短所
最大の長所は、個人差の影響を分析から分けられることです。反応時間や不安の強さは人によって大きく違いますが、同じ人の A と B を比べれば、その人の「元々の水準」は差し引かれます。その結果、同じ人数でも条件の差を見つけやすく(検定力が高く)なり、必要な参加者数が少なくなります。どれだけ少なくなるかは、同じ人の A と B の値がどのくらい相関するかで決まります。相関が高いほど有利です。
短所は、条件を順番に出すこと自体が結果に影響することです。
- 順序効果: 後に出した条件ほど、慣れて成績が上がる(練習効果)か、疲れて成績が下がる(疲労効果)
- 持ち越し効果: 前の条件の影響が次の条件に残る。薬や気分の操作のように効果が続くものでは特に問題になる
- 仮説の推測: 両方の条件を見た参加者が「何を調べているか」に気づき、期待に沿った回答をする
順序効果は、条件の提示順を参加者ごとに変えるカウンターバランスで釣り合わせられます。順番の表の組み方はラテン方格法の記事にまとめています。一方、持ち越し効果と仮説の推測は、順番を変えても消えません。
被験者間計画の長所と短所
長所は、1 人が 1 つの条件しか体験しないため、順序効果も持ち越し効果も起きないことです。実験の意図も推測されにくく、1 人あたりの所要時間も短くなります。
短所は、群の間の個人差が条件の差に混ざることです。たまたま A 群に成績のよい人が集まれば、条件の効果と区別できません。この影響を小さくするには、参加者をどの条件に入れるかを無作為に決める(無作為割り当て)ことと、十分な人数を集めることが必要です。必要な人数は効果の大きさで変わるので、「被験者内の何倍」のような一律の目安はありません。計画を決める前に、想定する効果量で両計画の必要人数を計算して比べておきます。
どちらを選ぶかの判断基準
次の順に考えると決めやすくなります。
- 条件を 2 回体験すると成り立たない操作か: 「初めて見た」ことが重要な刺激、ネタバレで効果が消える課題、効果が長く残る操作なら、被験者間計画にします
- 集められる人数: 参加者が集まりにくいなら、被験者内計画のほうが現実的です。必要な人数の目安を先に計算しておきます
- 条件の数と所要時間: 条件が多いと、1 人がすべてを体験するには時間がかかりすぎます。疲れや集中の切れが結果に響くほど長くなるなら、一部の要因を被験者間に分けることを考えます
- 先行研究の計画: 比べたい先行研究が被験者内計画なら、同じ計画にしたほうが結果を比べやすくなります
混合計画
要因が 2 つ以上あるとき、一方を被験者内、もう一方を被験者間にする計画を混合計画と呼びます。例えば「教示の種類(2 種類、参加者ごとに 1 つ)× 課題の難しさ(3 水準、全員が全部)」のような計画です。持ち越しが心配な要因だけを被験者間にし、ほかは被験者内にして人数を抑える、という使い方ができます。
計画を決めたら書き残すこと
- どの要因が被験者内で、どの要因が被験者間か
- 被験者内要因の提示順をどう決めるか(カウンターバランスの方式)
- 被験者間要因の割り当てをどう決めるか(無作為化の方式)
- 各条件・各提示順パターンの目標人数
この 4 点は、倫理審査の申請書と論文の方法セクションの両方で必ず問われます。
Psynaut で使う場合
Psynaut では、フォームのセクション(条件や尺度のまとまり)の並びをどう扱うかを、区間ごとに選べます。
- 被験者内計画: 区間内の順序を「ラテン方格法」または「完全ランダム」にすると、各参加者に全セクションが異なる順で出ます
- 被験者間計画: 区間内の順序を「被験者間割付」にすると、対象のセクションのうち 1 つだけが各参加者に割り当てられ、ほかの条件のセクションは表示されません
- 混合計画: 固定セクションで区切った区間ごとに方式を変えられるので、一方の区間を被験者間割付、別の区間をラテン方格法にできます
- 提示順と条件の組み合わせ(パターン)は、来た参加者から順に巡回して割り当てます。パターンごとの配布用リンクを発行して、実験者が手で割り当てることもできます
- 「実験条件」で要因と水準を登録してセクションを対応付けると、CSV の列名に条件コードが付きます。分析モジュールで要因をそのまま独立変数に使えるのは被験者間の要因(1 人が 1 条件だけを見る要因)で、被験者内の要因は long 形式の CSV の条件列を使って分析します
設定画面は、ログインなしで触れるフォームビルダーのデモで試せます。
参考文献
- Greenwald, A. G. (1976). Within-subjects designs: To use or not to use? Psychological Bulletin, 83(2), 314–320. https://doi.org/10.1037/0033-2909.83.2.314
- Charness, G., Gneezy, U., & Kuhn, M. A. (2012). Experimental methods: Between-subject and within-subject design. Journal of Economic Behavior & Organization, 81(1), 1–8. https://doi.org/10.1016/j.jebo.2011.08.009
この記事をシェアする
研究の準備を Psynaut でまとめる
フォームの作成から参加者の日程調整、分析用データの書き出しまで、無料プランで試せます。
次に読む記事
- 研究のヒント順序効果とは|練習効果・疲労効果・持ち越し効果の見分け方と 3 つの対処法順序効果とは、条件や質問を出した順番そのものが回答や成績を変えてしまうことです。「何番目か」で決まる練習効果・疲労効果と、「直前に何を出したか」で決まる持ち越し効果(キャリーオーバー効果)を見分け、カウンターバランス・ランダム化・被験者間計画のどれで対処するかを決める手順を説明します。
- 研究のヒントVAS法とは|Webアンケートで使うときの設定と注意点VAS(視覚的アナログ尺度)は、線分上の位置で程度を答えてもらう回答形式です。件法との違いと、Web で使うときに決めておく範囲・ラベル・数値の表示・つまみの初期位置、分析の注意点をまとめます。
- 研究のヒントリッカート尺度は何件法にするか|5件法・7件法と中間選択肢の選び方リッカート尺度を自作するときは、何件法にするか、中間の「どちらともいえない」を入れるか、ラベルと数値をどう付けるかを決める必要があります。既存の尺度を使うときの注意と、Web で回答を集めるときの工夫をまとめます。