研究のヒント

VAS法とは|Webアンケートで使うときの設定と注意点

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VAS(視覚的アナログ尺度)は、線分上の位置で程度を答えてもらう回答形式です。件法との違いと、Web で使うときに決めておく範囲・ラベル・数値の表示・つまみの初期位置、分析の注意点をまとめます。

VAS(Visual Analogue Scale、視覚的アナログ尺度)は、両端に言葉を置いた線分を見せ、線上のどこに当てはまるかで程度を答えてもらう回答形式です。痛みや気分、主観的な強さのように、段階に区切りにくい感覚を測るときによく使われます。

この記事では、5 件法などの件法との違いと、Web アンケートで VAS を使うときに決めておくことを順に説明します。

VAS と件法の違い

件法では、用意した目盛りの中から 1 つを選んでもらいます。VAS には目盛りがなく、回答者は線上の好きな位置を選べます。紙の VAS では 100mm の線分を使い、左端からの距離を mm 単位で測って得点にする方法がよく知られています。

VAS と 5 件法の違いを示す図

図 1 VAS は線上の位置を、5 件法は 5 つの目盛りのどれかを記録する

観点VAS5 件法
記録される値連続した値(例: 0〜100)1〜5 の整数
回答の操作つまみを動かして位置を決める目盛りを 1 つ選ぶ
細かい差拾える目盛りの間の差は拾えない
言葉の受け取り方両端の言葉だけを解釈すればよい目盛りごとの言葉の受け取り方が人によって違いうる

VAS の値は細かく取れますが、回答者が本当にその細かさで区別しているとは限りません。条件間の小さな差や、前後の変化を見たいときに向いています。一方で、Web の VAS は 5 件法などに比べて回答に時間がかかり、未回答も増えやすいという報告があります(Couper et al., 2006)。質問紙の中で VAS を使う質問は、細かい値が本当に要るものに絞るとよいでしょう。

Web で VAS を使うときに決めること

範囲と記録する値

Web では画面の幅によって線分の長さが変わるため、mm ではなく、左端を 0、右端を 100 とした値で記録するのが一般的です。0〜100 にしておくと、紙の VAS(100mm)の結果と比べやすくなります。Web で集めた VAS の値を間隔尺度として扱えるかを調べた研究もあります(Reips & Funke, 2008)。

両端のラベル

両端には、その感覚の両極を表す言葉を置きます(例:「まったく痛くない」「想像できる最悪の痛み」)。線の途中には言葉を置かないのが基本です。途中に言葉を置くと、回答がその位置に集まりやすくなるといわれます。

数値を見せるか

つまみの位置に合わせて数値を表示すると、回答者は数値を選ぶつもりで答えるようになり、50 や 70 のようなきりのよい値に回答が集まることがあります。位置の感覚で答えてほしい場合は、数値を見せない設定にします。

つまみの初期位置と「動かしたか」の区別

Web の VAS で特に気をつけたいのが、回答前のつまみの位置です。たとえばつまみが最初から中央にあり、動かさなくても値が記録される作りだと、動かさずに先へ進んだ人の回答が「50」として残り、本当に 50 と答えた人と区別できなくなります。

回答者がつまみを動かしたかどうかを区別できるかを、使うツールで確かめておきましょう。動かすまで値を記録しない作りであれば、未回答と中央の回答を分けられます。

スマートフォンでの操作

研究参加者は自分のスマートフォンで回答することが多く、画面が狭いと線分も短くなります。指でつまみを動かすときに、縦のスクロールと取り違えることもあります。本番の前にスマートフォンで実際に回答し、端まで動かせるか、思った位置で止められるかを確かめておきましょう。

VAS のデータを分析するとき

  • 値は連続量として扱えるため、平均や標準偏差を求め、t 検定や分散分析で比べられます。
  • 端に回答が集まる(天井効果・床効果)ことがあるので、まずヒストグラムで分布を確かめます。
  • 端に集中していたり、大きく偏っていたりするときは、順位にもとづく検定(ノンパラメトリック検定)も候補になります。
  • 同じ人が複数の条件で答えた場合は、被験者内の要因として分析します。

Psynaut で VAS をつくる

Psynaut では「スライダー」の質問で VAS をつくれます。

Psynaut の回答画面に表示された VAS の質問

図 2 Psynaut の回答画面の VAS(つまみを動かした後の状態)

  • 範囲(最小値と最大値)を設定できます。
  • 両端のラベルは、全項目に共通のものと、項目ごとに別のものを選べます。
  • つまみの位置の数値を表示するかどうかを切り替えられます。
  • 1 つの質問に複数の項目を並べ、項目ごとに回答してもらえます。
  • つまみを動かすまで値は記録されません。必須にした質問は、つまみを動かすまで次へ進めません。

回答前のつまみは左端に表示されます。左端の値を答えたい人も、一度つまみを動かしてから左端に戻すと記録されます。左端に近い回答が多くなりそうな質問では、教示文に「左端と答える場合も、つまみを一度動かしてください」と書いておくと迷いません。

回答画面の見え方は、質問形式のデモでログインせずに試せます。

参考文献

  • Couper, M. P., Tourangeau, R., Conrad, F. G., & Singer, E. (2006). Evaluating the effectiveness of visual analog scales: A web experiment. Social Science Computer Review, 24(2), 227–245. https://doi.org/10.1177/0894439305281503
  • Reips, U.-D., & Funke, F. (2008). Interval-level measurement with visual analogue scales in Internet-based research: VAS Generator. Behavior Research Methods, 40(3), 699–704. https://doi.org/10.3758/BRM.40.3.699

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