順序効果とは|練習効果・疲労効果・持ち越し効果の見分け方と 3 つの対処法

順序効果とは、条件や質問を出した順番そのものが回答や成績を変えてしまうことです。「何番目か」で決まる練習効果・疲労効果と、「直前に何を出したか」で決まる持ち越し効果(キャリーオーバー効果)を見分け、カウンターバランス・ランダム化・被験者間計画のどれで対処するかを決める手順を説明します。
心理学の実験や質問紙調査では、同じ人に複数の条件や質問を順番に出すことがよくあります。このとき、出した順番そのものが回答や成績を変えてしまうことを順序効果と呼びます。順序効果には性質の違う 3 つの種類があり、どれが起きそうかで対処の仕方が変わります。ここでは 3 つの種類の見分け方と、カウンターバランス、ランダム化、被験者間計画という 3 つの対処法の選び方をまとめます。
順序効果とは
条件 A と条件 B を全員に「A → B」の順で出したとします。B の成績が A より高かったとき、それは B という条件の効果でしょうか。それとも、2 番目に出したから慣れていたのでしょうか。全員が同じ順番だと、この 2 つを区別できません。
条件の違いではなく順番の違いが結果に混ざることを、順序効果と呼びます。順序効果は実験を無効にするわけではありませんが、放っておくと「条件の差」と「順番の差」が分けられなくなります。
順序効果の 3 つの種類
| 種類 | 何が起きるか | 例 |
|---|---|---|
| 練習効果 | 課題に慣れて、後に出した条件ほど成績が上がる | 記憶課題で、2 回目のリストのほうが覚え方のコツをつかんで成績が高くなる |
| 疲労効果 | 疲れや飽きで、後に出した条件ほど成績が下がる、回答が雑になる | 長い質問紙の後半で、全部の項目に同じ選択肢を選び続ける |
| 持ち越し効果 | 前の条件の影響が次の条件に残る | 怖い映像を見た直後に見た中立的な映像も、怖く評価される |
練習効果と疲労効果は、主に「何番目に出したか」で決まる影響です。一方、持ち越し効果は「直前に何を出したか」で決まる影響で、条件の組み合わせによって大きさが変わります。この違いが、対処法の選び方に関わってきます。
持ち越し効果は、キャリーオーバー効果とも呼ばれます。質問紙では「前の質問が次の質問の答えを変える」文脈効果として現れます。例えば Strack らの研究では、恋愛の状況をたずねる質問を生活満足度の質問の前に置くと、2 つの回答の相関が大きくなりました。直前の質問が、満足度を判断するときの材料になったと解釈されています。
対処法 1: カウンターバランス
提示順を何通りか用意し、参加者ごとに違う順番で出す方法です。「A → B」で受ける人と「B → A」で受ける人を同じ人数にすれば、順番の影響は 2 つの条件に均等に分かれ、条件の差だけが残ります。
条件が 3 つ以上になると、全部の並びを使うには人数が足りなくなります。そこで、少ないパターンで各条件が各位置に同じ回数来るように釣り合わせるラテン方格法を使います。前後関係(どの条件の直後に来るか)まで釣り合わせたいときは、Williams の計画と呼ばれる特別なラテン方格を使います。表の組み方はラテン方格法の記事で説明しています。
カウンターバランスは順序効果を「消す」のではなく「どの条件にも同じだけかかるようにする」方法です。練習効果や疲労効果はこれで対処できますが、持ち越し効果が大きいときは、釣り合わせても誤差が大きくなり、条件の差を見つけにくくなります。
対処法 2: ランダム化
参加者ごとに提示順をくじ引きで決める方法です。質問紙の項目が 20 個、30 個とあるとき、すべての並びを計画して割り当てるのは現実的ではありません。項目の順番を参加者ごとにランダムにすれば、特定の項目が常に最後に来て疲労効果を受ける、という偏りを避けられます。
ランダム化は人数が多いときに有効です。人数が少ないと、たまたま似た並びが多くなり、釣り合いが取れないことがあります。条件が少なく、人数も限られているときは、カウンターバランスのほうが確実です。
対処法 3: 被験者間計画にする
1 人に 1 つの条件しか出さなければ、順番そのものが存在しないので、順序効果は起きません。これが被験者間計画です。
持ち越し効果が避けられないときは、この方法を選びます。例えば、課題の「解き方のヒント」を与える条件と与えない条件を比べる場合、ヒントを一度知った人は知らなかった状態に戻れません。この種の操作は、参加者を分けるしかありません。
代わりに、条件の数だけ参加者が必要になり、群の間の個人差が条件の差に混ざります。2 つの計画の比較は被験者内計画と被験者間計画の記事にまとめています。
どの対処法を選ぶか
- 条件を 2 回体験すると成り立たないか: ネタバレ、学習、効果が長く残る操作なら、被験者間計画にします
- 持ち越し効果は小さいか: 小さいなら被験者内計画にして、カウンターバランスで釣り合わせます。条件の間に休憩や無関係な課題を挟むと、持ち越しをさらに減らせます
- 条件や項目の数は多いか: 条件が 2〜6 個ならラテン方格法、項目が数十個あるならランダム化が扱いやすいです
順序効果を記録して確かめる
どの参加者にどの順番で出したかは、必ずデータに残します。分析のときに「提示順」を要因に加えれば、順序効果がどれくらいあったかを確かめられます。順序効果が大きければ考察で触れ、小さければ「提示順の効果は認められなかった」と書けます。記録が無いと、どちらも言えません。
Psynaut で使う場合
Psynaut では、フォームの構成単位ごとに順序効果への対処を設定できます。
- セクションの順: 条件や尺度のまとまりであるセクションの並びを、ラテン方格法・完全ランダム・被験者間割付から選べます。説明や同意のセクションは位置を固定して対象から外せます
- セクション内の質問の順: 質問の並びを入力順・ランダム・ラテン方格法から選べます。まとめて動かしたい質問はグループにすると、並べ替えでも一緒に動きます
- 選択肢の順: 選択肢の並びを回答者ごとにランダムにできます
- 記録: 書き出す CSV の wide 形式に、参加者ごとのパターン名とセクションの提示順が列として入ります。順序効果の確認に使えます
設定画面は、ログインなしで触れるフォームビルダーのデモで試せます。
参考文献
- Strack, F., Martin, L. L., & Schwarz, N. (1988). Priming and communication: Social determinants of information use in judgments of life satisfaction. European Journal of Social Psychology, 18(5), 429–442. https://doi.org/10.1002/ejsp.2420180505
- Williams, E. J. (1949). Experimental designs balanced for the estimation of residual effects of treatments. Australian Journal of Scientific Research, Series A: Physical Sciences, 2(2), 149–168. https://doi.org/10.1071/CH9490149
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