研究のヒント

心理学の卒論アンケートの作り方|尺度選びから分析用データまで

公開日

心理学の卒論でアンケート調査をするときの手順を、尺度の準備、フォームの構成、順序効果への対処、予備調査、データの整形の順にまとめました。

卒論でアンケート調査をするとき、質問を並べたフォームを作るだけなら 1 時間もかかりません。時間がかかるのは、その前後の作業です。どの尺度を使うかを決め、回答の偏りを防ぐ並べ方を考え、集まった回答を分析できる形に直す必要があります。この記事では、心理学の卒論でアンケートを作るときの手順を、つまずきやすい点と一緒に説明します。

1. 研究の問いと使う尺度を決める

まず、何と何の関係を調べたいのかを 1 文で書きます。例えば「SNS の利用時間が長い人ほど、孤独感が高いか」のような文です。この文に出てくる概念(SNS の利用時間、孤独感)ごとに、どう測るかを決めます。

心理学では、すでに信頼性と妥当性が確かめられた尺度を使うのが基本です。尺度を選んだら、次の 3 点を控えておきます。

  • 出典: 尺度を作成した論文を読み、項目と回答の選択肢(5 件法・7 件法など)を正確に写す
  • 逆転項目: 得点の向きが逆の項目がどれか。分析の前に得点を反転させる必要がある
  • 下位尺度: 1 つの尺度が複数の因子に分かれている場合、どの項目がどの因子に入るか

尺度の使用に作成者の許諾が要るかどうかは尺度によって違います。論文や配布元の案内を確認し、わからなければ指導教員に相談しましょう。

2. フォームの構成を決める

心理学のアンケートは、おおむね次の順に並べます。

  1. 研究の説明と同意: 研究の目的、所要時間、回答は任意で途中でやめられること、データの扱いを書き、同意を得てから回答に進んでもらう
  2. フェイス項目: 年齢・性別・学年など。分析に使うものだけにする
  3. 尺度: 研究の中心となる質問
  4. 注意確認問題: 「この項目では『あまりあてはまらない』を選んでください」のように、正しく読んでいれば答えが決まる質問。読まずに回答した人を見分けるために、尺度の途中に入れる
  5. 終わりのあいさつ: 研究についての問い合わせ先など

心理学のアンケートの構成を 5 つの部分で示した図

図 1 注意確認問題は、最初ではなく尺度の途中に入れる

倫理審査が必要かどうかは、所属する大学・学部の規定によって決まります。調査を始める前に必ず確認してください。

3. 順序効果に気をつける

同じ質問でも、どの順に出すかで回答が変わることがあります。これを順序効果と呼びます。例えば、ネガティブな気分を尋ねる尺度のすぐ後に自尊感情の尺度を置くと、自尊感情が低めに出るかもしれません。

対処の方法は 2 つあります。

  • ランダマイズ: 尺度内の項目の順番を、回答者ごとにランダムに入れ替える
  • カウンターバランス: 尺度(セクション)の提示順を何通りか用意し、回答者を各パターンに均等に割り当てる。ラテン方格法を使うと、少ないパターン数で順番の影響を釣り合わせられる(詳しくは「ラテン方格法とは」)

どちらも、手作業でフォームを複製して作るとミスが起きやすい部分です。

4. 予備調査をする

本番の前に、友人や研究室のメンバー数人に回答してもらいます。確かめることは次のとおりです。

  • 回答にかかる時間(説明に書いた所要時間と合っているか)
  • 意味が取りにくい質問がないか
  • スマートフォンで回答しづらい画面がないか
  • 書き出したデータの列が、分析で使う形になっているか

最後の点は見落とされがちです。予備調査の回答を一度書き出し、分析の手順を最後まで試しておくと、本番の後で困りません。

5. 配布して回答を集める

配布の方法は、授業での案内、SNS、研究室の参加者リストなど、研究計画で決めた方法に従います。必要な回答者数は、分析の方法と見込まれる効果の大きさから決まります。指導教員と相談して、事前に目標の人数を決めておきましょう。

6. 分析できる形にデータを整える

回答が集まったら、分析の前に次の作業をします。

  • 除外する回答を決める: 注意確認問題を間違えた回答、すべての項目に同じ選択肢をつけた回答などを、事前に決めた基準で除く(「注意確認問題の入れ方と除外の基準」)
  • 逆転項目を処理する: 1〜5 の 5 件法なら「6 − 回答の値」のように得点を反転させる(「逆転項目の処理と尺度得点の計算」)
  • 尺度得点を出す: 下位尺度ごとに項目の合計か平均を求める
  • データの形をそろえる: 1 人 1 行の wide 形式か、1 回答 1 行の long 形式か、使う分析ソフトに合わせる

表計算ソフトで手作業で行うと、反転し忘れや列のずれが起きやすい部分です。

Psynaut で作る場合

Psynaut(サイノート)は、心理学の実験・調査向けのアンケートフォームです。この記事で挙げた作業のうち、次のものをフォームの設定で行えます。

  • セクションの提示順をラテン方格法で回答者に割り当てる、質問の順番をランダムに入れ替える
  • 逆転項目を含む尺度得点を計算し、CSV の列として書き出す
  • 注意確認問題などの除外条件に当たった回答に印を付ける(回答そのものは消さない)
  • 公開前のフォームで予備調査用の URL を発行する
  • wide / long の形式で CSV を書き出す

フリープランでフォームを 3 件まで作れます。どんな回答画面になるかは、ログインなしで体験デモから試せます。

まとめ

卒論のアンケートは、フォームを作ること自体よりも、尺度の準備、順序効果への対処、データの整形に時間がかかります。予備調査の段階で分析まで一度通しておくと、本番の後に慌てずに済みます。

手順決めることつまずきやすい点
1. 問いと尺度測る概念と使う尺度逆転項目・下位尺度の控え忘れ
2. フォームの構成説明・フェイス項目・尺度の並び注意確認問題を最初に置く
3. 順序効果ランダマイズかカウンターバランスかフォームを手で複製するときのミス
4. 予備調査所要時間と分かりにくい質問書き出したデータの確認を忘れる
5. 配布配布方法と目標の人数人数を事前に決めていない
6. データの整形除外・反転・尺度得点・データの形反転し忘れや列のずれ

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